お米が育てる、人と里山のつながり—稲作文化が紡ぐもの。

根白石の田んぼから受け継ぐ稲作文化

「おもしろごはんWEB」でライターを務めるすずめ農園の髙橋美穂です。

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私は、この土地でお米を育てることを、単に農作物をつくる仕事だとは考えていません。

田植えをし、稲を育て、秋に収穫する。その一連の営みの中には、季節の移ろい、田んぼに暮らす生きもの、地域の人とのつながり、そして先人から受け継がれてきた食文化があります。

日本では昔から、稲作を中心に地域の暮らしが営まれてきました。

田植えや稲刈りを助け合い、収穫を祝い、米から餅や酒をつくる。稲を収穫したあとのわらも、縄や草履、わら細工など、暮らしに必要なものへと姿を変えてきました。

ここ泉かむりの里も、そうやってお米とともに歩んできた土地です。明治42年の記録では、農業生産額の70.3%がお米。そのお米が、この土地の食文化を育んできました。

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そして、その稲作を支えてきたのが、泉ヶ岳を水源とする「かむり 川(現七北田川)」の清らかな水です。

先人たちは、堰や堤をつくり、 くぐり穴といった工夫を重ねて、かむり川の水を田んぼ へ引きました。すずめ農園の田んぼも、この泉ヶ岳のふもとで、その水の恵みをいただいています。

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田んぼへ水を運ぶ水路は「つかい川」と呼ばれ、野菜を洗うなど暮らしの水としても使われました。

今でもすずめ農園では、畑で採れた野菜を洗うのに家の前の「つかい川」を利用しています。また、農作業の道具や長靴を洗うときにも使います。

田んぼに水を引き入れるだけでなく、生活の一部として使えるようにとわざわざ家の前に水路を通しているのです。

そこに先人の知恵と自然と向き合う姿勢、地域の皆で力を合わせて暮らしてきた様子が伺えます。

ある日の体験イベントのおむすび

 

一粒のお米から見えてくるもの

春、田んぼに水を張ると、土の中から草や生きものが顔を出します。田植えの季節には、泥に足を取られながら一株ずつ苗を植えていきます。

夏になると、青々とした稲が風に揺れ、秋には黄金色の穂が実る。

泉ヶ岳を望む根白石の田園風景。その中に、300年以上続く米農家の田んぼを舞台に活動する「すずめ農園」があります。

すずめ農園で企画する親子の田んぼ体験「ひとつぶクラブ」は、一粒のお米を苗にするところからはじまります。子どもたちにも実際に田んぼに入ってもらうと、泥の感触に「キャー!」と声を上げたり、カエルやヤゴを見つけて夢中になったり。

稲刈りでは、鎌を使って稲を刈る感覚に夢中になる子もいれば、トンボやイナゴを追いかけるのに夢中になる子もいます。田んぼは、お米が育つ場所であると同時にたくさんの生きものが暮らし、多様な命が育まれていることを全身で体験するのです。

親子で田植え体験の様子

土に触れ、水に触れ、稲に触れ、生きものに触れる。

そんな体験を重ねるうちに、子どもたちの五感が少しずつ開いていくのを感じます。

そして、秋には収穫したお米をおむすびにして味わいます。

「今食べているお米は、この田んぼで育ったんだ」

そのことを頭で覚えるのではなく、目で見て、手で触れて、最後は自分の口で味わう。

そんな「腑に落ちる体験」を、私たちは大切にしています。

田んぼの生きものを夢中で探し、捕まえる子供たち

 

稲作は、人と人をつなぐ文化

すずめ農園「こめ部」は、みんなで本気の稲作に取り組むコミュニティ。2020年よりスタートし、種まきから田植え、除草、稲刈りまでを手作業で行い、収穫したお米をみんなで分け合って、無農薬のお米づくりを行っています。

2025年のこめ部 田植えの達成感

手作業だからこそ、時間も手間もかかる。そんな伝統的な稲作だからこそ、声をかけあい、共に汗を流し、自然とチームワークが生まれています。

11月の収穫祭では、最後に「よいお年を。また来年!」と言い合って、お互いの健康を祈り、田んぼでまた再会することを心待ちに別れる。

稲の成長とともに、人と人とのつながりまで育っていきます。

昔の日本では、こうして稲作を中心に地域の人々の絆ができ、日本固有の文化が生まれていったのだろうと実感するのです。

 

「食べられる」という安心を、次の世代へ

東日本大震災を経験した私たちは、「帰る場所があること」も「食べ物があること」も、決して当たり前ではないと感じました。

だからこそ、目の前の田んぼで稲が育ち、秋にお米が実る風景を見ると、「今年も食べられる」ということに、静かな安心を覚えます。

私たちが大切にしている「医食同源」という考え方も、決して難しいものではありません。土地の恵みをいただき、祖母から教わった発酵や保存の知恵を暮らしに取り入れる。

そんな日々の積み重ねの中に、健やかに生きるための知恵があるのだと思います。

一粒のお米の向こうには、太陽や水、土、生きもの、農家の仕事、そして地域の人々の営みがあります。

田んぼから食卓へ。

そして、食卓から次の世代へ。

泉ヶ岳のふもと、この泉かむりの里でお米とともに育まれてきた里山の食文化を、これからも大切に受け継いでいきたいと思っています。

 

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⚫︎ 親子の食育体験「ひとつぶクラブ

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