味噌がつなぐ、里山の暮らしと人の縁

一杯の味噌汁に、その土地の暮らしが詰まっている

「おもしろごはんWEB」でライターを務めるすずめ農園の髙橋美穂です。ライタープロフィールはこちら

泉かむりの里にある実家の味噌汁は、具が決まっていなくて、そのとき畑で採れる食材が入っていました。

春にはサヤエンドウ、夏にはナス、秋にはサツマイモ、冬には里芋といった具合です。

味噌汁のおもしろさは、決まった形がないことです。
「その家、その季節、その土地のものを、一つのお椀にまとめた料理」とも言えます。

旬のものを入れ、手軽に調理でき、栄養も満点。

「一汁一菜」「一汁三菜」といった日本の伝統的な食卓で、味噌汁は毎日の健康を支えてきた立役者なのだと思います。

そして、その「家の味」をつくっていたのが、昔の家庭で仕込まれる味噌でした。

 

「手前味噌」は、我が家の味への自信

「うちの味噌が一番おいしいよ」
そんなふうに、それぞれの家庭が自分たちの味を誇ったことから、「手前味噌」という言葉が生まれたといわれています。

今では「自分で自分のことを褒める」という意味で使われる「手前味噌」ですが、そのもとにあるのは、長い時間をかけて自分たちで仕込んだ味噌への愛着と自信でした。

大豆を煮て、つぶして、麹と塩を合わせ、桶に仕込む。

シンプルな材料と工程なのに、材料の割合や仕込み時期によって千差万別の味になるのが味噌のおもしろさであり、魅力です。

すぐには食べずに、季節をまたいでじっくり待つ。保管場所やその年の気温の変化によっても味が変わってきます。

そうしてできあがった味噌は、単なる調味料ではなく、その家の暮らしそのものだったのではないでしょうか。

味噌汁をつくるたびに、「今年の味噌はおいしくできたね」と家族で味わう。

そんな小さな積み重ねが、「我が家の味」をつくり、次の世代へと受け継いできたのだと思います。

 

3世代の奇跡が織りなす「てしごと泉」の味噌

「てしごと泉」の熊谷洋子さんは25年以上にわたり味噌を作り続けてきました。きっかけは、実家のお母様だったと言います。

洋子さんのお母様は味噌を製造・販売し、品評会でも「一番おいしい」と評されるほどの腕前。そのレシピを受け継ぎ、現在では、嫁の恵美さんとともに味噌づくりをしています。

洋子さん(左)恵美さん(右)

原料は、ご主人の常司さんが育てたお米「ひとめぼれ」と地元で育った在来大豆「ミヤギシロメ」。家族の力が合わさり、根白石でも評判の美味しい味噌がつくられています。

洋子さんは「恵美さんが一緒に味噌を作りたいと言ってくれたことが嬉しい」と感謝を込めて言い、恵美さんは「お母さんの技術がここで終わってしまったらもったいない」と尊敬を込めて言う。

そんなふたりのあたたかい関係が、美味しいお味噌をつくっているのだと感じるのでした。

→てしごと泉・熊谷洋子さんのインタビュー記事はこちら

てしごと泉の味噌は、根白石おもしろ市で購入いただけます。

 

人と人をつなぐ味噌づくりの時間

私は「米農家に学ぶ手前味噌教室」を開催しています。集まった人たちで味噌を仕込む時間は毎回とても楽しくて、笑顔と笑いが絶えません。

味噌教室でのひとコマ。大豆を潰しています。

きっと味噌を仕込むというのは昔からそういう風景だったのだろうと思うのです。

大量の大豆を煮て潰す、麹と塩を混ぜ合わせる。
シンプルながら、量が多いとなかなかの大仕事です。だからこそ、昔は近所の人たちが集まって、一緒に仕込むこともありました。

「今年も味噌の季節だね」
「最近どう?元気にしてた?」
そんなたわいもない話をしながら、手を動かす。

そして、何か月も経って、いよいよ食卓に並ぶ。

味噌の味を楽しみながら、
「あのとき、こんな話で盛り上がったな」
「みんなで作ったの、楽しかったな」
そんな仕込みの日の記憶まで、一緒によみがえってくる。

味噌には、そのものの味だけではなく、人とのつながりや、そのときの思い出まで一緒に熟成されていくような、おもしろさがあると感じています。

「舌」だけでなく「心」にもいろんな味わいを与えてくれる、それが泉かむりの里に受け継がれている手作り味噌の魅力です。